2020.7.11 第897回放送分 『子どもの腎臓の疾患』2回目 ゲスト:宮園 明典ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「子どもの腎臓の疾患」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の宮園 明典(みやぞの あきのり)ドクターです。
宮園さん今週もどうぞよろしくお願いいたします。

宮園明典Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 先週は、腎臓は生命を維持する上で、非常に重要な役割を担っていることをお話しいただきましたが、今週はどのようなことを教えていただけますか。

宮園明典Dr: 今週は、学校検尿の大切さについてです。
毎年4月になると、各学校で検尿が行われます。
これは1974年に学校保健法で取り決められて今日にいたります。
その意義は世界に向けても報告されていて、20歳未満で末期腎不全にいたった子どもの割合を調べたデータでは、学校検尿が行われていないアメリカに比べると、およそ4分の1という好成績でした。

二見いすず: 検尿をすることで、病気を早く発見できるということでしょうか?

宮園明典Dr: そうですね。
実は腎臓は、何か異常が起きても症状として現れにくい臓器なんです。

二見いすず: 症状がないと、なかなか病院を受診しようとは思わないですよね。

宮園明典Dr: そうなんです。
中には、細菌感染や尿路結石など、熱や痛みを伴う病気もありますが、時間をかけてゆっくりと進行する「腎炎」と呼ばれる病気や、生まれつきの腎臓の奇形などでは、ほとんど症状は現れません。

二見いすず: そうなんですね。
それでは、だいぶ進行してから症状が出るということでしょうか?

宮園明典Dr: その通りです。
進行して初めて、尿の量が少なくなって全身がむくんだり、疲れやすくなったりするという症状が出てきます。
このような症状をきっかけに病院を受診したときは、腎臓の働きがすでに損なわれてしまっていて、手の施しようがないことがほとんどです。

二見いすず: 見過ごしてしまいがちとはいえ、怖いですね。

宮園明典Dr: はい。
一度損なわれた腎臓の働きは回復することはなく、最終的には透析治療が必要になります。
つまり、治療のチャンスがある初期の段階で、病気を診断することが腎臓の働きを温存するために欠かせません。
また、治療が望めない病気であっても、その進行を遅らせるための工夫は可能です。
しかも学校検尿は腎臓病だけでなく、糖尿病の早期発見にも役立っています。

二見いすず: もし、学校検尿で病気かもしれないと分かったときは、どうしたらいいのでしょうか?

宮園明典Dr: その際は、「症状がないから大丈夫」と自己判断はせずに、精密検診を受けるようにしてください。

二見いすず: 病気を早期に発見することが大切だからこそ、学校検尿が非常に意味のあるものだということがよく分かりました。
来週もよろしくお願いいたします。
お話は、宮園明典ドクターでした。ありがとうございました。

宮園明典Dr: ありがとうございました。