2020.7.18 第898回放送分 『子どもの腎臓の疾患』3回目 ゲスト:宮園 明典ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「子どもの腎臓の疾患」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の宮園 明典(みやぞの あきのり)ドクターです。
宮園さん今週もどうぞよろしくお願いいたします。

宮園明典Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 先週は、学校検尿の重要性についてお話しいただきましたが、今週はどのようなことを教えていただけますか。

宮園明典Dr: 今週は、ネフローゼ症候群についてです。
ネフローゼ症候群というのは、血液中のタンパク質が尿に漏れ出てしまう状態のことで、子どもの腎臓病の中でも多くを占める病気です。

二見いすず: どのくらいの子どもたちがこの病気にかかっているのでしょうか?

宮園明典Dr: 日本では毎年およそ1,000人の患者さんが新たに発症しています。

二見いすず: そのネフローゼ症候群になると、どのような症状が出るのでしょうか?

宮園明典Dr: 血液中のタンパク質が尿に失われると、水分が血管の外にしみ出し、それが原因で全身がむくんだり、胸やおなかの中に溜まると息苦しさや腹痛のもとになります。
また、血液がドロドロになって血栓ができることもありますし、重症な細菌感染を合併することもあります。

二見いすず: だいぶ深刻な状態になってしまうんですね。

宮園明典Dr: はい。
尿蛋白は厄介な症状を引き起こしますが、尿蛋白が持続すると腎臓の機能が損なわれて、腎不全に進行することも大きな問題です。

二見いすず: 原因は、分かっているのでしょうか?

宮園明典Dr: いいえ。
ネフローゼ症候群になる子どものおよそ9割は原因不明なんです。
しかし、古くからステロイド剤などの免疫を抑える薬が効くことから、何らかの免疫異常によるものが考えられています。
ただし、80%以上の患者さんはステロイドの飲み薬で尿蛋白が消えますが、治療が終了するにつれて、その半数以上が再発します。

二見いすず: 難しい病気なんですね。再発した場合はどのような治療を行うのでしょうか?

宮園明典Dr: 特別な針を使って腎臓の一部を採り、顕微鏡で調べる「腎生検」と呼ばれる検査を行って、治療方針を決めたり、病気の経過を予測したりすることに役立てることがあります。

二見いすず: ステロイドというと、強い薬というイメージがありますが、副作用などはあるのでしょうか?

宮園明典Dr: 成長障害や骨粗しょう症、白内障などの副作用が問題になります。
再発を繰り返す場合は、ステロイド治療の回数を減らすため、別の免疫抑制剤を使用しますが、これらの薬はそれぞれ特徴があるので、主治医から詳しく説明を受けて、治療方針を決定することが大切です。


二見いすず: 分かりました。
来週もよろしくお願いいたします。
お話は、宮園明典ドクターでした。ありがとうございました。

宮園明典Dr: ありがとうございました。