二見いすず: | 今月のドクタートークは「子どもの腎臓の疾患」をテーマにお送りしています。 お話は鹿児島県医師会の宮園 明典(みやぞの あきのり)ドクターです。 宮園さん今週もどうぞよろしくお願いいたします。 |
宮園明典Dr: | よろしくお願いいたします。 |
二見いすず: | 先週は、学校検尿の重要性についてお話しいただきましたが、今週はどのようなことを教えていただけますか。 |
宮園明典Dr: | 今週は、ネフローゼ症候群についてです。 ネフローゼ症候群というのは、血液中のタンパク質が尿に漏れ出てしまう状態のことで、子どもの腎臓病の中でも多くを占める病気です。 |
二見いすず: | どのくらいの子どもたちがこの病気にかかっているのでしょうか? |
宮園明典Dr: | 日本では毎年およそ1,000人の患者さんが新たに発症しています。 |
二見いすず: | そのネフローゼ症候群になると、どのような症状が出るのでしょうか? |
宮園明典Dr: | 血液中のタンパク質が尿に失われると、水分が血管の外にしみ出し、それが原因で全身がむくんだり、胸やおなかの中に溜まると息苦しさや腹痛のもとになります。 また、血液がドロドロになって血栓ができることもありますし、重症な細菌感染を合併することもあります。 |
二見いすず: | だいぶ深刻な状態になってしまうんですね。 |
宮園明典Dr: | はい。 尿蛋白は厄介な症状を引き起こしますが、尿蛋白が持続すると腎臓の機能が損なわれて、腎不全に進行することも大きな問題です。 |
二見いすず: | 原因は、分かっているのでしょうか? |
宮園明典Dr: | いいえ。 ネフローゼ症候群になる子どものおよそ9割は原因不明なんです。 しかし、古くからステロイド剤などの免疫を抑える薬が効くことから、何らかの免疫異常によるものが考えられています。 ただし、80%以上の患者さんはステロイドの飲み薬で尿蛋白が消えますが、治療が終了するにつれて、その半数以上が再発します。 |
二見いすず: | 難しい病気なんですね。再発した場合はどのような治療を行うのでしょうか? |
宮園明典Dr: | 特別な針を使って腎臓の一部を採り、顕微鏡で調べる「腎生検」と呼ばれる検査を行って、治療方針を決めたり、病気の経過を予測したりすることに役立てることがあります。 |
二見いすず: | ステロイドというと、強い薬というイメージがありますが、副作用などはあるのでしょうか? |
宮園明典Dr: | 成長障害や骨粗しょう症、白内障などの副作用が問題になります。 再発を繰り返す場合は、ステロイド治療の回数を減らすため、別の免疫抑制剤を使用しますが、これらの薬はそれぞれ特徴があるので、主治医から詳しく説明を受けて、治療方針を決定することが大切です。 |
二見いすず: | 分かりました。 来週もよろしくお願いいたします。 お話は、宮園明典ドクターでした。ありがとうございました。 |
宮園明典Dr: | ありがとうございました。 |