2020.7.25 第899回放送分 『子どもの腎臓の疾患』4回目 ゲスト:宮園 明典ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「子どもの腎臓の疾患」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の宮園 明典(みやぞの あきのり)ドクターです。
宮園さん最終週の今日もどうぞよろしくお願いいたします。

宮園明典Dr: よろしくお願いいたします。
今日は、腎臓病と日常生活、特に運動制限や食事制限についてお伝えしたいと思います。

二見いすず: お子さんですから、学校生活がどうなるのかなどの心配がありますよね。

宮園明典Dr: そうですね。
昔は、腎臓病は不治の病として考えられ、安静や長期の入院が重要と考えられてきました。
現在でもそのイメージを持っている方がいらっしゃいます。

二見いすず: 実際は違うのでしょか?

宮園明典Dr: はい。
運動が腎臓病を悪化させるという医学的な根拠はなく、高血圧や浮腫などの一部の状況をのぞいて、運動制限は不要とされています。
長期の入院や学校生活での運動制限などは、子どもの心理発達や社会性の発達に対する弊害を作り出しますし、不要な制限を強いられた子どもは自分に自信をなくしてしまいます。

二見いすず: そうなってくると、腎臓の病気以外の部分でも、心配になってきますよね。

宮園明典Dr: そうなんです。
将来的に腎臓病が治ったとしても、社会的に自立することが難しくなることが考えられます。
また、腎不全になった場合でも、運動をしない子どもの方が肥満や栄養不良に陥りやすく、心臓病や脳梗塞などの合併症を引き起こしやすくなることが知られています。

二見いすず: 腎臓の病気を持っているお子さんでも、学校行事や運動をさせた方がいいということでしょうか?

宮園明典Dr: はい。
病状にもよりますが、なるべく周りのお子さんと同じように参加させることが大切です。
次に食事制限についてですが、腎臓病だとタンパク質や果物を摂ってはいけないという情報がインターネットなどに載っていますが、多くの小児腎臓病では、原則として食事制限は不要です。
タンパク質や果物、生野菜の制限は、進行してしまった腎臓病の患者さんにのみ制限されるものです。

二見いすず: 大人と子どもでは、制限される食事も違うのですね。

宮園明典Dr: そうですね。
もちろん病気の状態や使用している薬によっては食事制限も必要ですが、大人と違って子どもは成長するので、バランスよく食事を摂ることが大切です。
過度の食事制限によって成長障害を生じると、自信の喪失や身体的なコンプレックスにつながり、社会に適応できなくなることが考えられます。
ですので、主治医とよく相談して、不要な制限はせず、子どもらしい生活が送れるようにして欲しいと思います。

二見いすず: よく分かりました。
今月は4週にわたり、子どもの腎臓病について、鹿児島県医師会の宮園明典ドクターに貴重なお話をお伺いしました。
どうもありがとうございました。

宮園明典Dr: ありがとうございました。