2020.8.29 第904回放送分 『耳鼻咽喉科・頭頸部外科疾患』5回目 ゲスト:山下 勝ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「耳鼻咽喉科・頭頸部外科の疾患」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の山下 勝(やましたまさる)ドクターです。
山下さん、最終週の今日もどうぞよろしくお願いいたします。

山下勝Dr: よろしくお願いいたします。
今日は咽頭ガンについてお話しします。
咽頭は上中下に分かれていて、できた部位により、上咽頭ガン、中咽頭ガン、下咽頭ガンに分けられます。

二見いすず: 分かりました。
ではそれぞれのガンについて詳しく教えてください。

山下勝Dr: はい。
まず上咽頭ガンですが、これはエプスタインバーウイルスというウイルスとの関連が示されているガンです。
鼻のつきあたりにできるので、鼻詰まりやトンネルに入った時のような耳が詰まる感じを生じることがあります。
脳や頸動脈など生命維持に必要な臓器の近くなので、手術で大きく取ることが難しく、まず抗がん剤と放射線による治療が行われます。

二見いすず: 分かりました。
次に中咽頭ガンについて教えてください。

山下勝Dr: 中咽頭ガンは、咽頭の違和感やまれに痛みなどの症状があり、ヒトパピローマウイルスが検出されるタイプと、検出されないタイプに分類されます。
ヒトパピローマウイルスが検出されるタイプは若年層に多く、治療成績が良いことが分かってきました。
ただし、先ほどのエプスタインバーウイルスも、ヒトパピローマウイルスも、原因と言い切れるほどの根拠はなく、またウイルスがあれば必ず発症するというものでもありません。

二見いすず: そうなんですね。
最後に下咽頭ガンについて教えてください。

山下勝Dr: はい。
下咽頭ガンは声がれや飲み込むときののどの痛みなどの症状があり、進行すると嚥下障害や呼吸困難も起こります。
下咽頭ガンは食道の入口にあたる部位のガンですが、その前に声を出す喉頭があり、手術で大きな切除が必要な場合には喉頭ごと摘出するため、声を失うこともあります。

二見いすず: 声まで失ってしまうと、生活もかなり不自由になってしまいますね。
これらのガンはどのようにしたら早期で発見できるのでしょうか。

山下勝Dr: 残念ながらいずれのガンも早期では発見されにくく、首へのリンパ節転移や呼吸や飲み込みの問題などで見つかるケースが多いです。
一方、胃カメラによる早期発見例も増えています。
初期は無症状ですので、耳鼻咽喉科医による内視鏡検査が有効です。

二見いすず: そうなんですね。
日頃からどのようなことに注意すればいいのでしょうか。

山下勝Dr: たとえば首が左右対称でないとか、リンパ節の腫れ、のどに違和感がある場合などは、一度お近くの耳鼻咽喉科医にご相談いただければと思います。
またタバコと飲酒は危険因子になるので、控えることが望ましいです。

二見いすず よく分かりました。
今月は5週にわたり、鹿児島県医師会の山下勝ドクターに「耳鼻咽喉科・頭頸部外科の疾患」について貴重なお話をお伺いしました。
どうもありがとうございました。

山下勝Dr: ありがとうございました。