2021.5.15 第941回放送分 『胃ガン』3回目 ゲスト:上之園 芳一ドクター


二見いすず: 今月5月のドクタートークは「胃ガン」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の上之園 芳一(うえのその よしかず)ドクターです。
上之園さんどうぞよろしくお願いいたします。

上之園芳一Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 先週は、胃ガンの治療についてお話いただきました。
胃ガンの患者さんの6割が早期ガンですから、胃カメラでの内視鏡治療を受けられるとのことでした。


上之園芳一Dr: はい。
今週は抗ガン剤治療についてお伝えいたします。
抗ガン剤治療をする方というのは、手術だけでは解決しない方が対象になるのですが、治療の目的として3つに分けられます。

二見いすず: 分かりました。では一つずつ教えてください。

上之園芳一Dr: はい。
まず1つ目ですが、手術の前に抗ガン剤治療を行うケースです。
術前化学療法と言います。
これはステージ3の患者さんや、スキルス胃癌と言って比較的若くて再発の危険性が高い患者さんに当てはまるケースです。

二見いすず: そうなんですね。

上之園芳一Dr: 次に2つ目ですが、術後化学療法です。
手術をしたらステージ2もしくは3だった人が抗ガン剤治療を1年間すると、再発率が10%下がります。
目で見えるガンはないけれど、細胞レベルで残っているかもしれないからやっつける!というイメージです。

二見いすず: 手術後にするのが2つ目なんですね。

上之園芳一Dr: はい。
最後の3つ目は、ステージ4で手術によって全部切除できない、つまり肝臓に影がある、肺に影がある、お腹の中にガンがこぼれてしまった腹膜播種などのケースです。
実は1999年以前、胃ガンに対して抗ガン剤はあまり効かなかったのですが、1999年にエスワンという日本で発表された内服抗ガン剤を皮切りに多くの抗がん剤が開発され、ここ20年で抗ガン剤治療はすごく進歩しました。

二見いすず: そうだったんですか。

上之園芳一Dr: はい。
1999年以前はステージ4の平均余命は3ヶ月。およそ半分の方が亡くなってしまっていたのですが、これが今、平均余命は13ヶ月以上にまで伸びています。
しかも抗ガン剤が効いてガンが小さなり、手術できるようになるケースもあるんです。

二見いすず: それは患者さんにとってはうれしいでしょうね。

上之園芳一Dr: そうですね。
現在はサバイバーといって、ガンになっても長生きできる人が増えてきましたし、普通の仕事をしながら治療できるようにもなりました。
昔は「副作用は耐えるもの」というイメージでしたが、現在は吐き気などを抑える薬もあり、通常の生活を行いながら治療できるんです。

二見いすず: 胃ガンの抗ガン剤治療はだいぶ進歩したんですね。
お話は鹿児島県医師会の上之園芳一ドクターでした。
ありがとうございました。

上之園芳一Dr: ありがとうございました。