2021.7.10 第949回放送分 『熱中症』2回目 ゲスト:杉本 龍史ドクター


二見いすず: 今月7月のドクタートークは「熱中症」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島市立病院救命救急センターの杉本 龍史(すぎもと りゅうじ)ドクターです。
杉本さんどうぞよろしくお願いいたします。

杉本龍史Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 先週は、熱中症の予防について教えていただきました。
熱中症になる条件がそろった環境下では、水分をとっていても熱中症になることがあり、十分な予防にはつながらないこと。
むしろ暑い日の不要不急の外出を避けることが、一番の予防になるというお話でした。
ところで、「熱中症になる条件がそろった環境」というのは、どのような環境なのでしょうか。

杉本龍史Dr: その時の気温はもちろん、湿度、風が吹いているかどうか、日は照っているかどうかなどの環境的な要因。
そしてもう一つ、その方の体質や、持病はあるかどうか、作業内容といった個人的な要因。
この環境的な要因と個人的な要因の掛け合わせによって、熱中症になるかどうかが決まるんです。

二見いすず: 単純に暑いからという理由だけではないんですね。
環境的な要因として、熱中症になりやすい時期というのはあるのでしょうか。

杉本龍史Dr: はい、あります。
熱中症の発症には大きく2つのピークがあります。
1つ目は本格的に暑くなる前の梅雨明けの時期です。

二見いすず: 暑くなる前なんですね?
それはなぜでしょうか?

杉本龍史Dr: この時期は湿度の高さに加え、まだ体が暑さに慣れていません。
それなのについ油断して運動や作業をしていまい、熱中症になる人が後を絶たないんです。

二見いすず: そうなんですね。
もう1つのピークは、やはり猛暑日の続く8月ということでしょうか?

杉本龍史Dr: はい、そうです。
私たちは普段、汗をかいて体温調節をすることで、神経やホルモンを正しく働かせて体の機能を正常に保っています。
しかし、気温や湿度があまりにも高くなると、体温調節機能がうまく働かず、体温がどんどん上昇してしまうんです。

二見いすず: その結果、どうなってしまうのでしょうか?

杉本龍史Dr: 神経の働きや体内のミネラルバランスが狂ったり、脳や心臓、腎臓などの重要な臓器がダメージを受けたりして、最悪の場合は死に至ることもあります。
毎年のように熱中症の患者さんが搬送され、少なくない人数を看取ったり、寝たきりになってしまった方を施設に送ったりしています。
先週からの繰り返しになりますが、暑い日の不要不急の外出は避けること。
これをぜひ覚えておいていただきたいです。

二見いすず: よく分かりました。
今月は熱中症をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島市立病院の杉本龍史ドクターでした。
ありがとうございました。

杉本龍史Dr: ありがとうございました。