2021.7.24 第951回放送分 『熱中症』4回目 ゲスト:杉本 龍史ドクター


二見いすず: 今月7月のドクタートークは「熱中症」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島市立病院救命救急センターの杉本 龍史(すぎもと りゅうじ)ドクターです。
杉本さんどうぞよろしくお願いいたします。

杉本龍史Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 先週は、気象条件をもとに熱中症の危険度を判断する目安の一つ、「暑さ指数」について教えていただきました。
暑さ指数が28を超えると危険性が高まること、そしてご高齢や寝たきりの方は、室内においても注意が必要というお話でした。
今日はどのようなことについて教えていただけますか。

杉本龍史Dr: 今日は熱中症の症状についてお伝えいたします。
私たち医療従事者は、重症度に応じて、軽い方からT度、U度、V度と3つに区分けしています。

二見いすず: では、それぞれの症状について詳しく教えてください。

杉本龍史Dr: はい。
まずT度ですが、主な症状としては、めまい、立ちくらみ、筋肉痛、こむら返りなどです。
U度になると、頭痛やだるさ、吐き気や嘔吐、判断力の低下や軽い意識障害が出てきます。
そして最も重症度が高いV度では、強い意識障害、痙攣、脳や心臓、腎臓などの内臓機能の障害などがみられます。

二見いすず: 症状の軽い順からT度、U度、そして重症だとV度ということですが、それぞれの症状をみれば、ある程度は自分の重症度が判断できるということでしょうか?

杉本龍史Dr: いいえ。
症状だけをみて判断するのは避けていただきたいです。
たとえば、立ちくらみがあったとして、「このくらいなら軽い熱中症だろう」と、ご自身で安易に判断するのは危険です。

二見いすず: 暑い日に熱中症の症状が出ると、決めつけてしまいがちだと思うのですが、そうではないんですね?

杉本龍史Dr: はい。
そもそも症状だけでは本当に熱中症かどうかは分かりません。
暑い日に倒れて熱中症の疑いで救急搬送されてきた患者さんを検査してみると、実は脳卒中や心臓病、あるいは感染症だったということが少なくないんです。
とにかく、「夏だから熱中症」と決めつけないことが大切です。

二見いすず: よく分かりました。
勝手に決めつけずに他の病気の可能性も考慮することが大切なんですね。
とはいえ、「熱中症の疑いがある」と思ったときに、私たちにできることはありますか。

杉本龍史Dr: ご本人にしっかり意識があるならば、涼しい場所で衣服を緩めて熱を逃し、適切な水分補給をしてください。
できれば水分と同時にミネラルも補うことが大切です。
ただし先ほどもお伝えした通り、熱中症以外の可能性もあるので、そのような対応の後でも、だるさや、めまいなどの症状が残っていたら、かかりつけ医に診てもらうことをおすすめします。

二見いすず: 分かりました。
安易に熱中症と決めつけることは危険ですが、意識がある場合は、体の熱を逃がして適切な水分補給が大切ということです。
お話は鹿児島市立病院の杉本龍史ドクターでした。
ありがとうございました。

杉本龍史Dr: ありがとうございました。