二見いすず: | 今月のドクタートークは「依存症」をテーマにお送りしています。 お話は鹿児島県医師会の田中大三(たなか だいぞう)ドクターです。 田中さんどうぞよろしくお願いいたします。 |
田中 大三Dr: | よろしくお願いいたします。 |
二見いすず: | 先週は、「アルコール依存症」についてお話をお伺いしました。 お酒をやめられないのは、本人の意思の弱さや性格の問題ではなく、脳の機能障害であるというお話でした。 |
田中 大三Dr: | はい。 お酒の量が増える理由の一つとして、大量のドーパミンが放出されるということが言えると思います。 |
二見いすず: | ドーパミンというのは、ときどき耳にしますが、うれしいと感じたり、仕事を頑張ろうと思ったり、何かそういう良いときに出るものというイメージです。 |
田中 大三Dr: | そうですね。 アルコールや薬物には、脳内にドーパミンを大量に放出させる作用があります。 短時間で気持ちが高揚するので、つらく不快な感情を忘れさせてくれるのです。 |
二見いすず: | つらい感情を一時的でも忘れさせてくれるから、お酒をやめられなくなってしまうのですね。 ということは、アルコール依存症になる人は、そもそも何かしらつらい感情を抱えているということなのでしょうか。 |
田中 大三Dr: | おっしゃる通りです。 何かしらに生きづらさを感じて苦しんでいる人が、人に相談することができず、依存症になってしまうのです。 |
二見いすず: | 誰にも相談できないのは、さぞかし心が苦しいと思います。 しかし、アルコールを飲み続けると、今度は体まで蝕まれていきますよね。 そのような方がアルコール依存症から回復していくには、どのような治療をしていけばいいのでしょうか。 |
田中 大三Dr: | 危険な飲酒患者にはお酒を減らしてもらい、依存症患者には断酒をすすめています。 一人でお酒をやめるのは難しいので、入院しながら断酒をすすめていきます。 しかしそれだけでは、大元の原因になっている「誰にも相談できない、生きづらさ」は解決できません。 そこで、自助グループへの参加をおすすめしています。 |
二見いすず: | 自助グループではどのようなことをするのでしょうか。 |
田中 大三Dr: | 自分のお酒にまつわる話や自分の感情を出すようにします。 するとそれを聞いた他の人たちは、「あぁ、みんな一緒なんだ。みんな自分と同じように失敗してきたんだ」と思えるのです。 |
二見いすず: | 自分の話をすることが、その場所にいる他の人のためにもなるのですね。 |
田中 大三Dr: | はい。 人間は、「他者に分け与える」という行為をすると、ドーパミンがでます。 つまり他者貢献は、自分のためでもあるのです。 しかも自分の話をすることで、安心できる自分の居場所を持つことができ、人との絆を育むことができます。 これが依存症患者にとって、とても大切なことなのです。 |
二見いすず: | よく分かりました。 今月は「依存症」をテーマにお送りしています。 お話は鹿児島県医師会の田中大三ドクターでした。 ありがとうございました。 |
田中 大三Dr: | ありがとうございました。 |