2022.1.15 第976回放送分 『依存症』3回目 ゲスト:田中 大三ドクター


二見いすず: 今月のドクタートークは「依存症」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の田中大三(たなか だいぞう)ドクターです。
田中さんどうぞよろしくお願いいたします。

田中 大三Dr: よろしくお願いいたします。

二見いすず: 先週、先々週と2週にわたり、アルコール依存症について教えていただきました。
今日は何についてお話いただけますか。

田中 大三Dr: 今日は依存症全般についてお伝えします。
アルコール、ギャンブル、薬物、リストカットなど、これらに依存してしまう理由は、一つのものだけに頼ってしまうからなのです。
「なぜ人は依存症になるのか?」という問いに対して、現段階においてもっとも支持されている理論は、「自己治療仮説」と言われています。

二見いすず: 「自己治療仮説」ですね。
あまり聞くことがない言葉ですが、どういう意味なのでしょうか。

田中 大三Dr: 自己治療仮説とは、依存症の本質を「快楽の追求」ではなく、「心理的苦痛の減少・緩和」とするところに特徴があります。

二見いすず: つまり、これをアルコール依存症で例えると、飲むと楽しいからではなく、つらいことを減らしたい、そこから逃れたいという気持ちから飲むということでしょうか。

田中 大三Dr: そうですね。
「行動に問題があるとしても、その背後にある動機や目的は、必ずや『善』である」。
心理学者で精神科医のアルフレッド・アドラーもこのように言っています。
自分のつらい気持ちを治療するため、なにかに依存してしまったということです。
依存症の特徴として、脳にある前頭葉が萎縮します。そうなると、物事を考えられなくなり、理性が働かなくなります。

二見いすず: 先々週、依存症になる方は、本人の性格や意思の問題ではなく、脳の機能障害であると教えていただきましたね。

田中 大三Dr: はい。
通常、人は心理的苦痛がある場合、その苦痛を周囲に相談することによって、解決しようとします。
一般に心理的苦痛は、言語化して表に出すことで緩和されるからです。
しかし、依存症の人はそのような苦痛を言語化し人に相談することができません。
依存症からの回復は孤独からの脱却です。
自分の生きづらさと向き合い、解決し、人を信頼し、癒され、絆を回復することです。

二見いすず: 自分のつらさを言葉にして周囲に相談することができなかった結果、依存症になるということですが、なぜ依存症になる人は、周囲に相談できないのでしょうか?

田中 大三Dr: その理由は、「愛着障害」というものにも関係してくるので、この続きはまた来週話したいと思います。

二見いすず: 分かりました。
お願いします。
今月は「依存症」をテーマにお送りしています。
お話は鹿児島県医師会の田中大三ドクターでした。
ありがとうございました。

田中 大三Dr: ありがとうございました。