二見いすず: | 今月のドクタートークは「依存症」をテーマにお送りしています。 お話は鹿児島県医師会の田中大三(たなか だいぞう)ドクターです。 田中さんどうぞよろしくお願いいたします。 |
田中 大三Dr: | よろしくお願いいたします。 |
二見いすず: | 先週は依存症全般についてお話しいただきました。 依存症の人は、自分の心の中につらいことを抱えていても、それを言葉にして周囲に相談することができないというお話でした。 今日は、依存症になる人は、なぜ周囲に相談できないかを教えていだきます。 |
田中 大三Dr: | はい。 依存症の人が周囲に相談し助けを求めない理由は、彼らが人を信頼することができないからです。 |
二見いすず: | 「人を信頼できない」というのは、過去に何か理由があるからなのでしょうか? |
田中 大三Dr: | そうですね。 私たちは生まれてから今まで、親をはじめとする養育者や周囲の人との間で、安心感や人との信頼感を育みながら成長してきています。 しかし、幼児期に愛着形成がうまくできていないと、生きづらさを感じ、人を心から信頼することができなくなる傾向があります。 |
二見いすず: | 依存症になる人には、そのような過去を持っている方がいらっしゃるのですか? |
田中 大三Dr: | もちろん全員ではないですが、実際依存症の人の中には、愛着形成が困難であろうと思われる過酷な幼少期を送ってきた方や、幼い頃からの教育で、周囲の期待に応えようとするあまり、自らの心理的安心感や満足感を犠牲にし、感情を表に出せずにいる方が多くいるのも事実です。 |
二見いすず: | 幼少期のそのような過去があると、なかなか人を信じられなくなり、自分が抱えている、つらいことを話せなくなる。 だから何かに依存してしまうということなのですね。 過去にタイムスリップすることはできないですが、何か治療できる方法はあるのでしょうか。 |
田中 大三Dr: | はい。 まず、自分自身を見つけ、自分がこれでいいんだと思えること。 そして、過去を振り返り、自分が愛されてきたことを認識すること。 さらに人とのつながりの中で生きていること。これらを感じることを大切にしています。 |
二見いすず: | 愛されている、愛されてきたと感じることは、とても大切なことなんですね。 |
田中 大三Dr: | そうですね。 愛されて育つと、人は孤独にも耐えられます。 「自分はこれでいい」と思える基礎がしっかりとあるからだと思います。 一方、依存症の回復には、安心できる居場所、信頼できる他人、そして他人を信頼することのできる自分自身が必要です。 先週の話にも出てきましたが、心理学者で精神科医のアルフレッド・アドラーもこう言っています。 「人は居場所がないと感じると、精神を病んだり、アルコールに溺れたりする」。 「居場所の大切さ」というのが、よく分かる言葉だと思います。 |
二見いすず: | 今月は「依存症」をテーマにお送りしています。 お話は鹿児島県医師会の田中大三ドクターでした。 ありがとうございました。 |
田中 大三Dr: | ありがとうございました。 |